脳力の開発とは芸術創造に最も適した脳の状態を指す。ある仮説では11、07ヘルツの脳波やA10神経が活発化している時が最も創造的であるとしているがまだ証明されていないのが現状である。また禅やヨーガのディヤーナやビィパサナ等のメディテーションと脳力の関係も様々な実験が行われてはいるが未だ確かな答えは出ていないようである。しかしメディテーションにおける脳力開発が比較的良い効果を生んでる事は間違いない事実のようである。またテストステロンの制御と脳力また創造力にも深い関係があるようである。クンダリーニヨーガやタントラ等はこのテストステロンを制御コントロールする事で高い創造力を得ているようであるし、カストラートが超人的歌唱を行えた理由の一つでもあるように私は推測している。事実卓越した音楽家の多くはテストステロンの量が平均より少ない事が実験により確認されているのである。もちろんカストラートの時代の発声訓練教師や発声訓練法がどの時代のそれに比べて素晴らしかったという歴史的事実は文献で知る限りは疑いようのない事実である。

かつて歌い手と呪術師とは同義語であった。それはラテン語及び多くの言語で同様の事が確認されている。それゆえにかつての歌い手達は超能力歌唱とでもいうような歌唱をしたとする歌唱伝説が世界中で存在するのだ。神話の時代にはオルフェオやセイレーンが中世インドではミューンタンセンとスワミハリダースが歌の力で雨を降らせ、昼夜を逆転させるという神業を行ったと言われている。18世紀イタリアではファリネッリが7分30秒をノーブレスで早いパーセージを行ったとパリオペラ座の記録に残されている。これらの歌手を支えた力を異常な脳力(能力)だとする研究者もいるがほとんどは伝説だとする説が一般的なようである。とはいえ火のないところに煙はたたないわけでこれらの歌手の歌唱をただの伝説にするにはあまりにももったいないと私は思うのである。 

  ※脳の生理        人の脳は大まかには大脳半球、小脳、脳幹からなっている。脳と言うと多く人は普段右脳、左脳といのう言葉が馴染み深いと思うがこれは大脳半球の右側と左側を指した言い方である。一般的な方の脳の基礎知識はマスコミ等で語られるように左脳は言語、計算の論理的な働き、右脳は空間認識や情動、音楽や美術等の芸術的創造性を受け持つものだという情報を信じていると思うが事はそれ程単純なものではない、この説はいつの頃から言われたのかは定かではない、しかし19世紀中頃のヨーロッパでは右脳左脳の機能を分担せずに統一的に機能すると考えられていたようである。しかし1861年にフランス外科医のブローカや1874年にドイツ脳外科医ウェルニッケが話すことと言葉理解に関わる脳の言語中枢を発見により左脳優位説が言われ出し精神活動の中枢であるとも言われ出した、同時な右脳は情報の中継基地に過ぎないと考えられるようになったのである。音楽脳を右脳とする考え方は1970年あたりから始まったとする説が現在最も有力な説とされている。そして1976年の神経科学者のサイトビィックの報告により音楽脳=右脳の説は決定づけられる。サイトビィックはフランスの作曲家モーリス・ラベルの失音楽症を報告しておりラベルは54歳の時に進行性痴呆になり会話や書くことに障害がおこり、左脳の障害のため言語機能は失われていきピアノも弾けなくなった。だが初期の段階では作曲能力は失われなかったようである。だが音楽を表現する能力は失われており、演奏能力も楽譜を書く能力も失われてしまったようだ。ラベルは頭の中に音楽が浮かんでもそれを表現出来ない悩みを医師に打ち明けている。最終的には作曲能力も失われてしまうのだが、音楽の情動反応や音楽の記憶は失われなかったようだ。この報告の中でサイトビィックは右脳の音楽能力に注目していたため、音楽=右脳というふうになってしまったようだ。だが最近の研究では音楽経験が豊富なものほど左脳で分析的な聴き方をし音楽経験の浅いものほど右脳が活発に働くという結果が出ている。言語においても100年以上左脳のシルビィウス溝周辺に展開する脳領域が中枢だとされてきたが、それも近年の研究によって修正が求められているようだ。言語も音楽と同様に単純に左だけを使うわけではない確かにほとんどの人でどちらかというと左脳がよく働いているのだが、言葉の理解でなく言葉に込められた感情の読み取りには右脳も働いてている。とくに女性は言語における左右の脳の働きの偏りが少ないようである。音楽は右脳、言語は左脳という単純な図式は間違っている。
だが今のところ言語中枢であるベェルニッケ野やブローカ野に相当する音楽のみを処理する音楽中枢はみっかていない。どうやら音楽に関する領域は脳全体に広がっているようである。また音楽家ほどそうした傾向が強いようである。だが音楽の専門家の多くは脳と音楽においての情報は極めて間違った情報を信じているというのが現状である。私も尊敬し多くの民俗音楽学者からも尊敬されている小泉文夫氏ですらこういった情報には見事に騙されている。この間違った情報で音楽界で最も広く出回ったものには1972年の角田忠信氏の「日本人の脳」がある。私が認める数少ない発声書の一つである江本弘志氏の『スーパー発声法』もこの角田説には見事に騙されている。(スーパー発声法は歌をホリスティックな立場から見ておりその発声の要になる眉間のファルセットもベルカント黄金時代の失われた発声法であるファルセットインペットをルネッサンスしたものであると思う。下らない発声法の書が蔓延る現代で発声の本質を見事にくみとった至高の書の一つであるといって良いだろう)角田説とは簡単に言えば日本人と西洋人では音の感じ方が違うとするものであり、その原
因を脳の処理の仕方にあるとしたものである。角田はもともと聴力検査法であった「遅延聴覚フィードバック」を使い、音や音楽を左右どちらの脳で処理されるのかを調べている。その結果は日本人は言語や和楽器を左脳で右脳で西洋楽器や機械音を処理し西洋人は言語のうち子音のみを処理し母音を含む他の全ての音は右脳で処理するという結果になったという、江本弘志氏のスーパー発声法の考えの基本もイタリアベルカントで重要視される母音唱法が日本人と西洋人の脳処理が違う事から西洋人なみの唱法が普通の歌い方では無理とするものであった。小泉文夫氏も角田氏との対談の中で日本伝統音楽の特殊性を説き、日本音楽はパトス的(情動的)であり、西洋音楽はロゴス的(論理的)であるから両方の音楽をバランスよく学ぶことによってバランスのとれた脳の発育が可能になると説いた。しかしこの角田説は実際のところは科学的根拠がまったくないものであり、この説を支持する科学者は一人もいないらしいのである。科学の基本は誰がやってもある程度同じ結果が出る再現性であるが、この説は再現性がまったくないとされている。また近年、脳の働きを見ることが出来るPETやMRIといった最新機器を使った研究でも、日本人と西洋人に音、音声、音楽処理で差があるという結果は出ていないのである。また近年マスコミで話題になったモーツァルト効果なるものもまともな科学者の間では否定されている。モーツァルト効果は1993年ぬアメリカ、カリフォルニア大学にいたラウシャーらが行った研究が、イギリスの有名な科学誌であるネイチャーに掲載された事に始まる。だが1999年のネイチャー誌上でメタ分析によりモーツァルト効果たるものはないという事が証明された。メタ分析とは別々に行われた研究結果から得られた統計結果を統合し信憑性について見当する方法であるためその証明法はかなり信憑性の高いものであると思う。現在多くの科学者はモーツァルト効果はないか、たとえあったとしても効果はごくわずかでとるに足らないと考えているそうだ。        右脳と左脳から大分話しがより道してしまったが話しを再び脳の生理へと戻そう。脳は大脳半球、小脳、脳幹からなっているわけであるが、脳幹は脊髓と大脳半球を結ぶ組織で、心拍や呼吸、発汗、消化、睡眠などの生命維持のための重要な機能をコントロールしている。また脳幹のなかには聴覚のためな特殊な神経細胞のかたまりである下丘と上丘がある。そこで音がどこから聴こえてくるかのおおよその解釈が行われる。他にも脳幹にひ音楽的感動を含めた情動とのかかわりの深い化学物質を作る細胞が多く存在している。小脳ではさまざまな感覚器官からの情報を受け筋肉の運動調整機能を持つ。楽器を演奏し、歌をうたうことに直接関わるのもこの小脳である。        大脳半球は三つの皮質で構成され、新皮質、古皮質、旧皮質に区分される。音楽との関わりで重要とされるのは新皮質と旧皮質である大脳辺縁系である。新皮質は作曲や音楽の分析で重要な働きをする。大脳辺縁系は脳幹と新皮質の間で情報の橋渡しをする。辺縁系は別名、情動脳とも呼ばれ音楽的情動の原動力となる。
脳力の開発について